山鳥の矢 その2
前回から引き続き、屋久島ツアーで人気の屋久島の民話です。
それから二人はよめしを食べてやがて休みました。
その晩のこと。
「ごめん下さい。ごめん下さい」という声がしました。
息子は、
「こんなにおそうなってから、いけな人じゃろうかい。何の用事やんうかい」
と思いながら、戸をあけてみました。
すると、そこに見知らぬ一人の娘が立っていました。
「わたしは道に迷うてどっちへも行かれません。今晩どうかここに泊めてくれませんか。」
「それは気の毒なこと。どうぞ泊いやんせ。」
娘はその晩、そこに泊りました。
あくる朝はまっさきに起きて、水を汲んだり火をあこしたりして、かいがいしく手伝いました。
そこでカカさんがいいました。
「あんたははじめて泊ったのに、暗かうちから起きて水もくんだり火もあこしたりして手伝ってくれるが、いけなわけかな。」
娘はにっこり笑っていました。
そして、朝飯の仕度もすっかりととのえてくれました。
朝飯を三人で食べてから、カカさんと息子は、
「この娘さんは、どこさめ行くたんうかい」
と思っていましたが、どこへも行かないで、あれこれと手伝いをするのでした。
その翌日もそうでした。
「おかしかなあ、この娘さんは。どっちに行くかと思っていてもどこさめも行かんが。
しかし、なかなか働きものでよか娘さんじゃいが、息子の嫁になってくえんうかい」
こう思ったので、カカさんは娘にいいました。
「あんたはどっちに行くかと思えば、どっちにも行かず、家にあるが、いっそのこと、ここの嫁さんになってもらえんか。」
娘は、
「そうですか。それはありがたいことです」
といって、こころよく承知しました。
息子の嫁になった娘は、それからも一生懸命働きました。
さて、息子は弓を射るのが達者でした。
ある日、隣り村に悪者が出るから退治してくれと、息子のところにたのみにきました。
これを聞いていた嫁が、こういいました。
「あなたの矢ではとてもあの悪者を退治することはできません。わたしのおばさんの矢を借りて射ればできるでしょう。」